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陸・海軍礼式歌
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作詞 本居豊顕
作曲 納所弁次郎

踏む足灼くる夏の日も
吐く息凍る冬の夜も
憐れ兵士と諸共に
進みましけん野に山に

思うも寒き冬の夜の
北白川の水の月
清き御名は世と共に
流れて高く仰ぐべし

台湾すでに平らぎて
帰る近衛の勝鬨も
君いずこかに聞こし召す
ああ師団長宮殿下
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作詞 鳥山啓
作曲 鈴木米次郎

雲居を凌ぐ摩天嶺
容易く鳥も越えかねる
地の利を占めし敵塁の
守りは実に堅固なり

守りはよしや堅くとも
破れや破れとく進め
指揮する猛将誰なるぞ
大寺少将旅団長

頭髪上り眦裂け
駿馬を駆って馳せ登る
剛将の下に弱兵の
あらずと言うも理や

硝煙弾雨を凌ぎつつ
手負いと死人乗り越えて
ただひた攻めに攻め寄する
勢いいとも凄まじや

金城湯地と頼みつる
天険無双の摩天嶺
さしもに堅き砲塁も
我が手に今ぞ落ちにける

勇みて挙ぐる勝鬨に
山鳴り谷も応えつつ
黄龍の旗焼き捨てて
輝き渡る日章旗

敵艦はやくこれを見て
撃ち出す砲丸繋げれど
少将いとも悠然と
海上遠く見渡せり

この時敵の破裂弾
空気を切って飛び来り
砦の上に迸り
火炎は四方に散乱す

智勇を兼ねし良将も
痛手にさすが堪えかねて
摩天の嶺の淡雪と
儚く消えて失せにけり

ああ少将よ少将よ
皇国の為に身を捨てて
この敵塁を抜きしより
敵勢とみに挫折せり

この他数所の砲台の
瓦のごとく解けつるも
少将一死を省みぬ
忠勇義烈の結果なり

ああ少将よ少将よ
君をば撃ちし定遠は
幾程なくて我が軍の
雷火に脆く砕かれぬ

ああ少将よ少将よ
身は消えぬれど名を残す
栄誉は長くその山の
嶺より高く仰ぐなり
作詞 佐々木信綱
作曲 納所弁次郎

煙か波かはた雲か
遥かに見ゆる薄煙
海原遠く眺むれば
嬉しや正に敵の艦

溢るる勇気抑えつつ
待ちに待ちたる敵の艦
砕きて撃ちて黄海の
藻屑となさん時の間に

轟く砲の音凄く
逆巻く波の音荒く
海洋島の沖つ辺に
激しき戦い起りたり

艦の中にも赤城艦
艦は小さくか弱きも
鉄より堅き心もて
士卒は艦を進むなり

砕けや撃てや敵の艦
残る艦無くならんまで
胸をば楯に身を的に
進めや撃ての声高し

弱きを狙う敵艦は
左に右に寄せ来るを
続きて放つ我が砲に
敵の甲板人も無し

飛び来し敵の砲弾は
音凄まじく砕けたり
今までありし艦長の
姿は見えずなりにけり

砕けや撃ての号令は
士卒の耳に残れども
今まで立ちし艦長の
姿は見えずなりにけり

か弱き艦を進めつつ
優れる艦と戦いて
栄えある戦に艦長は
栄えある死をば遂げにけり

その身はよしや朽ちるとも
誉れは朽ちじ千代八千代
赤城の艦の名と共に
赤き心ぞ歌われん
作詞 大和田建樹
作曲 多梅雅

山嶽崩れ潮湧く
猛虎破竹の勢いに
旅順を指して攻め寄せる
時は明治の二十七
剣の霜も冴え渡る
十一月の末つ方

兵を指揮して真っ先に
進むは山地師団長
逸れる駒に鞭打ちて
来たれ続けと馳せ向かう
勇みに勇む我が軍の
将卒いかでか後るべき

月は残りて仄暗く
鳥だに鳴かぬ朝の空
まして怠る敵営の
眠り静けき夢の中
たちまち起る砲声は
嵐か波か雷か

弾丸雨と降り来るに
敵は早くも崩れたり
すわや勝利と我が兵の
一度に挙ぐる鬨の声
天に響きて椅子山の
堅塁見る間に落ちにけり

この時落ちし砲台の
中にも名高き饅頭山
占領しせるを知らせんと
機知に富みたる津田大尉
敵の屍骸の血潮もて
即座に染め出す日章旗

今や我が手に占め得たる
渤海湾の夕凪に
山彦返す奏楽の
声勇ましく聞こゆなり
我も歌わん諸共に
東洋歴史の光栄を
勝ち誇りたる軍隊は
蹄の音を後にして
はや影も無く進みけり
筒の響きも遠ざかり
煙ぞ濁り迷うなる

影幽かなる星一つ
明け行く空に輝きて
血潮の露に宿るなり
安城河原の月冴えて
憎むか死せしますらおよ

聞け進軍の喇叭の音
なおも吹き鳴らすは誰ぞや
見よ夏草の一群に
戦死をなせしますらおよ
枕並ぶる喇叭卒

岡の士より野末まで
赤き心に息込めて
闇に轟く音高く
吹きし喇叭を今は手に
名誉の傷をその胸に

左手に傷を押さえつつ
右手に喇叭を握り締め
吹き鳴らすなり勇ましく
霧より脆き身なれども
息ある限り我が役目

哀れ勇士の朝夢を
草の床より呼び覚まし
死地に進めと下知しつつ
吹き鳴らすなりその喇叭
息ある限り吹けや吹け

ああ顔色は変わりたり
暫し喇叭の音止めよ
汝が任務は終わりたり
やよ誉れある喇叭手よ
任務は今や終わりたり

旭の旗の影あるぞ
陣頭高く今一度
弾飛び来る戦場の
血潮の中に今一度
彼が喇叭は響くまじ

されど最期の一声の
響きは絶えて事も無く
月影暗き軍営に
過ぎし戦を語る時
敵の砦を陥とし入れ

聞け勝鬨の声高く
汝が任務終わりたり
汝が喇叭に進みてし
勇士の城を乗っ取りて
いざ別れなんその前に

喇叭を挙げて今一度
凱旋の曲を奏せずや
別れの曲を奏せずや
最期に残る息込めて
枯野の辺り秋立ちて

野風に騒ぐ旗薄
永き恨みや隠すらん
暁深く今もなお
今しが喇叭は響くなり
実に日の本山桜

残す誉れの名ぞ高し
身は外国の野に死すも
永く留めなんますらおよ
名は白神の源次郎
名は白神の源次郎
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