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陸・海軍礼式歌
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明治三九の年の冬
十一月の二十一
未だ明けやらぬ東雲に
仄かに見る椅子山は
敵の籠もれる砦にて

夥多の旗を翻し
砲塁堅固に山険し
これぞ今日の天王山
この時見方の砲兵は
左手の山の懐に
小松が原を楯にとり
威勢鋭く控えたり
やがて旭と諸共に
砲火の声も勇ましく
万雷一時に轟きて
天地も為に震動し
空に漲る砲煙は
霧か霞か白雪の
掛からぬ峯もなきかな
逸り立てる東武士
後れはせじと争いつ
戦友互いに楯となり
仕官はこれを誘導し
剣の林弾の雨
その一弾に十余人
又隊長の副馬まで
倒れるものを踏み越えて
撃てども衝けども何のその
凝り固まりたる忠義心
ただ一線を進み行く
折りしも優し上官は
一首の和歌を口吟み
静かに兵士を休憩し
再び伝うる号令に
喇叭の声も凄まじく
登り登りて敵兵の
地の利を占めて人の和に
加えは来たりし天の時
北風寒く吹き閉じて
敵の妖気を払いつつ
椅子山落ちしと聞くからに
血気に逸る武夫の
勇むは心の春駒の
繋ぎ止めん故もをし
中にも勇気絶倫と
音に響きし勇夫は
九州男児の名に恥じぬ
混成部隊の一群ぞ
この一群のものとぢか
逸る心を押し静め
隊伍を揃え堂々と
歩調正しく進む行く
折しも敵の一弾は
先に進みし我が兵の
哀れ胸板射抜きたり
深手に屈せぬ勇卒は
奢りの声を張り上げて
我が隊長よこの仇を
言うにや及ぶその仇は
今日のあたり報うべし
呼ばれる声と諸共に
斃れし屍飛び越えて
松樹二龍の敵兵を
蹄の塵になさんとて
勇む折りしも彼方にて
忽ち天地を震動し
黒煙空に遡り
あわや地雷に打たれぬと
見えしは心の迷いにて
早晩敵の塁上に
我を迎える日の丸の
旗は凛々しく立ちにけり
ああこれ人為か天佑か
清国一と頼みてし
経営辛苦の旅順口
瞬く時間に乗っ取りし
その勲やいかならん
その功績やいかならん
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作詞 旗野士良
作曲 ルート


遠音に響く伴の男達を
迎え祝う今日ぞ
鬼にも勝る丈夫達を
迎え歌う今ぞ
世の事には身を捧ぐ
勇ましや雄々しや
我等の後はさこそならめ
勇ましや雄々しや

軍の様の厳めし猛し
宜し怖る敵は
思えばもとは同胞・親族
おなじ国の御民
世のためには身を殺す
勇ましや雄々しや
人たるものは斯くぞあらん
勇ましや雄々しや

生きては敵を恐れしめ
死しては軍の神となる
広瀬中佐の功名は
武人の鑑国の花

敵港封鎖の企に
率先したる鬼中佐
威風は懦夫を起たしめて
軍気天地に振いたり

死すとも七度生れ来て
敵亡ぼさんの志
遂ぐべき時節は来たれりと
笑いて上る船の上

弾丸飛べども事とせず
沈みかかれる船橋に
忘れし刀を取りに行く
中佐の満身ただ肝か

昔は屋島の戦いに
近付く敵船切り抜けて
弓取り帰りし義経が
武勇もこれにはよも増さじ

杉野杉野と三度まで
尋ねて巡る福井丸
はや船体は傾きて
甲板潮に浸り行く

せんかたなさに乗り移る
小舟目指して来る弾丸に
あなや中佐は撃たれたり
屍は海に沈みたり

肉一片を形見にて
天晴れ名誉の戦死せし
中佐は再び帰らねど
雷名轟く五大洲

知るも知らぬも皆惜しむ
嵐の前の花花
英名千古に芳しき
中佐は武夫の名に恥じず
作詞 巌谷小波
作曲 小山作之助

神州男子数あれど
男の中の真男子
世界に示す鑑とは
広瀬中佐の事ならん

既に一度死を期して
旅順封鎖に向かいしが
事意に満たぬ無念さは
再び結ぶ決死隊

もとより君に捧げし身
妻も迎えず子も持たず
父の写真と兄の文
これぞ肌の守りなる

かかる暁将上にあり
下に弱卒などあらん
兵曹杉野なかんずく
中佐が無二の股肱たり

上下心を一にして
入るや虎穴の奥深く
その大任は船底に
積める石よりなお重し

探海灯は稲妻か
水雷はげに雷か
中を怯まず悠々と
入るや名に負う鬼中佐

かくて任務を果たせしが
我が兵曹はいかにせし
姿も見えず影も無し
哀れ杉野は撃たれしか

杉野はいずこ兵曹と
呼べど答えは荒波の
木魂と響く砲弾の
船に砕くる響きのみ

三度求めて三度得ず
かくては君も危うしと
促されつつ本意無くも
小船に移り乗らんとす

折しもあれや轟然と
耳を劈く敵弾は
血煙船に立ち込めて
中佐の姿ははやも無し

五尺の体の名残なる
ただ一寸の肉叢は
忠傑義傑侠傑の
千古に朽ちぬ宝ぞや

あな勇ましの軍神
七度人と生まれ来て
我が帝国を守るらん
あな勇ましの軍神
勇みて進め決死隊
旅順の港を閉塞し
敵の軍艦封鎖して
袋の鼠となせよかし

制海権を我の手に
確かに収むるこの一挙
唐の仁川天津も
豊けき武州と諸共に

我が大君の報国の
堅き心を表さば
我が武挙がりて世の中に
誉れは高く立ちぬべし

八百万の神々も
猛き勇士を護るなり
勲し立てよますらお
勇みて進め決死隊
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