軍国舞扇

作詞　藤田まさと
作曲　陸奥明

可愛い二八の花簪に
ちらり咲かした心意気
見やれ今宵も加茂川辺り
皇国乙女の舞扇

花の振袖だらりの帯も
形ばかりの浮調子
勤め離れりゃ銃後の護り
あやにかけます紅襷

橋の擬宝珠に朝風受けて
待てば来る来る銀の鳥
ほんに嬉しや祇園の空を
晴れて一刺し舞う翼

西湖の月

作詞　島田磐也
作曲　能代八郎

鳴くは虫の音草枯れて
露は戎衣を濡らさねど
帰らぬ戦友は今いずこ
西湖の月よ答えかし

亡き戦友を偲びつつ
君が形見の尺八を
手に取り吹けば打ち寄せる
小波悲し西湖畔

杭州湾の上陸に
死なば共にと誓ったが
不覚や俺はまだ生きて
戦火の跡に銃を執る

思えば過ぎし激戦も
今じゃ露営の夢の中
ああ杭州の夜は更けて
西湖の月も傾きぬ

国境の春（遠い故郷は）

作詞　松村又一
作曲　上原げんと

遠い故郷は早春なれど
ここはソ満の国境
春と言うても名のみの春よ
今日も吹雪きに日が暮れて
流れは果て無きアムールよ

ペチカ燃やしてウォッカ酌めば
窓に流れるバラライカ
祖国離れて旅する身には
なぜか心にしみじみと
響く優しのセレナーデ

例え荒野に粉雪降れど
やがて花咲く春じゃもの
咲けよオゴニカ真っ赤に咲けよ
燃ゆる血潮おこの胸に
明日の希望の花よ咲け

カタカナ忠義

作詞　十二村哲
作曲　細田義勝

戦友見てくれ倅の手紙
今年や一年アイウエオ
習い覚えたカタカナで
可愛いじゃないか
初の便りだ誉めてくれ

エンピツ舐め舐め
書いたのだろう
家の事なら御安心
母も元気で針仕事
可愛いじゃないか
俺によく似た四角い字

頭をひねり消しては書いた
紙にゃ名誉のゴムの穴
僕も毎日二重丸
可愛いじゃないか
ポチが子犬を生んだとさ

戦友見てくれ一番終い
君の御為国の為
どうか立派な働きを
可愛いじゃないか
カナで忠義を親に書く

上海ブルース

作詞　北村雄三
作曲　大久保徳二郎

涙ぐんでる上海の
夢の四馬路の街の灯
リラの花散る今宵は
君を思い出す
何も言わずに別れたね
君と僕
ガーデンブリッジ誰と見る青い月

甘く悲しいブルースに
なぜか忘れぬ面影
波よ荒れるなエトランゼ
二度とは逢えない別れたら
あの瞳
思いは乱れる上海の月の下