軍隊歓迎

作詞　旗野士良
作曲　ルート


遠音に響く伴の男達を
迎え祝う今日ぞ
鬼にも勝る丈夫達を
迎え歌う今ぞ
世の事には身を捧ぐ
勇ましや雄々しや
我等の後はさこそならめ
勇ましや雄々しや

軍の様の厳めし猛し
宜し怖る敵は
思えばもとは同胞・親族
おなじ国の御民
世のためには身を殺す
勇ましや雄々しや
人たるものは斯くぞあらん
勇ましや雄々しや

軍人亀鑑の歌

御国の為に尽くしたる
益荒猛夫は多けれど
ここに我々軍人の
亀鑑とす可き大丈夫は
抑も佐賀の兵乱に
一兵卒の身をもって
己が命を的として
一部六十余人なる
危難を救いし勲功は
太刀を洗いて紅の
雪を散せし筑後川
その川浪と諸共に
勇まし名を流しける
その後伍長に揚げられて
かの肥の国に隠れなき
熊本城を守りつつ
世にも名高き隼人の
薩摩猛夫の荒れ来るを
忠義一途の丈夫は
家をも身をも打ち忘れ
ここを先途と防ぎける

都の軍に通ぜよと
重き使命を軽き身に
覚束なくは思えども
流石は猛き益荒男の
営に帰りて潔く
雪の肌へに墨を塗り
鶉衣に身をばやつせとも
心の錦輝けり
当麻竹団もだだならぬ
四面楚歌なる城の外
指して行方は不知火の
知らぬ道芝踏み分けて
心強くも行く先に
遠近見ゆる篝火は
敵か見方か真の暗
黒白も分かぬ真夜中に
敵の陣へと走り来て
遂に虜となりにける

皮肉を砕く荒人の
苔の下に泰然と
千苦万苦耐え忍び
守者の眠りを伺いて
七重八重なる縛の
縄を解々鰐の口
縛れ出たる吉次越
たづきも知らぬ山中に
又も立ち入る虎の穴
再び縛に着たりし
心の中やいかならん
身は朝露と諸共に
消えなん者を張つめし
矢猛心の益荒男は
只一筋に国の為
尚も使命を達せんと
辛くも敵を欺きて
忠義を助くる神々の
應護に依りてつつがなく
近衛の陣に身を投じ
野津少将に見えしに
嬉し涙の堰あへず
暫は言も出ざりき
頓て使命を述べければ
少将厚く労わりて
己が陣にぞ留めける

かくて三月四日には
官軍攻撃利なくして
崩かかるを見るよりも
物に堪えぬ益荒男は
他人の銃を奪い取り
単身塁に突入れど
身は鉄石に非ざれば
雨や霰と来る弾に
敢え無く戦死を遂たりし
嗚呼比なき益荒男の
身のなる果てぞ天晴れぞ
これぞ我々軍人が
亀鑑と仰ぎ慕うなる
陸軍歩兵伍長にて
谷村計介なるぞかし
見よ靖国の境内に
高く聳ゆる記念碑は
辱なくも朝廷に
その忠烈を嘉せられ
大将宮の畏くも
筆をば下し給いたる
軍人亀鑑の四つの文字
昇る朝日に輝きて
その名は長く伝えなん
その名は長く朽ちざらん

郡司成忠

日本男児の誉れなる
郡司大尉の企れは
百と有余のつわものを
七艘のボートに乗り込ませ
千里の波濤を蹴破って
日本の北のその北の
千島の果ての占守島
極寒凛冽無人の地
千苦万苦の功績で
殖民拓地の実を挙げ
北門鎖鑰堅くなし
狡猾外奴の密猟や
海外諸国の蔑りを
防いで国威を示さんと
忠遊義胆の挙動を
叡慮に協いて帝より
降し賜る勅語にて
報交議会と名も高く
海を隔てて四百余里
向こうの岸には鷲の旗
こちらの岸には日の丸の
国旗同道靡かして
富国強兵の基を立つ
実に満足慶賀の至り

郡司大尉の北海遠征を送る歌

寒潮流る北の海
敷千の島は羅列せり
朔風雪を巻いて吹き
激浪岸を打って鳴る
いと物凄き千島灘
これぞ北門鎖鑰なる
島は荒れ果て磯は寂し
漁民の状態はいと哀れ
漁具も揃わぬ丸木舟
僅か磯辺を漕ぎ回り
立つる煙は糸のごと
行く末いかに暮すらん

沖辺に見ゆる黒船は
乗り込む人も澤なるに
漁どる具さえ取り揃い
保護の無きを幸いに
漁民の微弱を幸いに
無数の島を回航し
此処に彼処に漁労しつ
船を繋ぎて高鼾
海豹海馬膃肭臍
その収穫を襲断
悪きはかの密漁船
憐れむべきはこの漁民

誰か遺憾に耐えるべき
そを打ち棄てて置くからに
大尉はこれを救わんと
六艘のボート浮かべつつ
百二人の老水夫
そを引き連れて北海の
千島諸島に船を寄せ
出没自在に跋扈せし
密漁船を追い払い
ここに拓殖の計を立て
国の富強を計るなる
北の徹鑰を堅むなる
その門出の勇ましき
大尉の行くぞ頼もしき

熊本籠城

西も東も皆敵ぞ
南も北も皆敵ぞ
寄せ来る敵は不知火の
筑紫の果ての薩摩潟
世にも名高きますらおの
猛り狂いて攻め来たり

西九州に名も高き
熊本城を囲みけり
敵の総督隆盛は
古今無双の豪傑で
之に従う大将は
桐野篠原村田など
中にも逸見十郎太
剽悍決死の烈丈夫
その外兵士二三万
何れ劣らぬ薩摩武士

進み撃ち出す砲声に
天地も崩るるばかりなり
天地は崩れ山河は
裂かる例のあらばとて
動かぬものは君が御代
忠義の旗を振り翳し
死を見て帰するに如くにて
ただ一筋に国の為
進み進んで防戦す

過ぎし普仏の戦に
蔑士の城の降りしは
長く青史を汚したり
それにはあらで城中は
蟻の這い出る隙も無き
俗団の中を潜り出て
味方の軍に身を投じ
城の中なる有様を
語り問いつ示しあい

賊丘原を打ち破り
ここに初めて連路の
解けて嬉しき厚氷
地中の魚も時を得て
跳ねる心の活発地
万銃天地に鳴り響き
西北南東なる
囲の敵を打ち払い
空前絶後の功を立て
名を揚げ父母を顕わせし
我が日の本のますらおを
誉め羨まぬ者はなき
誉め羨まぬ者ぞなき