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陸・海軍礼式歌
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作詞 真下飛泉
作曲 三善和気

父上様か母様か
おお妹もご一緒に
遠い所を遥々と
ようこそお出で下さった

お別れ申したその日より
覚悟は立派にしましたが
船の中でもあちらでも
忘れかねたる胸の内

日の出る方を仰ぎ見て
まず第一は天子様
次には皆様御無事でと
毎日祈っておりました

御無事を祈っていたけれど
御国へ捧げたこの命
思いもよらず負傷して
再びお顔を見ようとは

時は三月十五日
鉄嶺付近の戦いに
逃げ行く敵を追い詰めて
散々懲らす一刹那

轟然落つる砲丸に
砂石は雲と飛ぶ中へ
我が身はついと一二間
前へのめって倒れたが

それより後はお父様
無念や知らずにおりました
仮病院へ着くまでは
全く夢中でありました

覚めてこの地へ帰されて
養生するとなった日も
今更去なずに止まってと
一度はお願いしましたが

願い叶わず帰されて
この広島にはや十日
心ならずもおめおめと
寝台の上におりまする

傷は肩をば撃ち抜いて
他にも二箇所あるなれど
医術進んだ今の世に
お情け深い軍医殿

治療は見事捗って
今じゃ痛みも止みました
二十日も経てば大丈夫
元の体になりまする

生まれてここに二十年
初めて付いたこの傷も
名誉の痕と喜んで
誉めて下され二人様

元の体になったなら
再びあちらに押し渡り
飽くまで御国へ御奉公
立派にし遂げて見せまする

立派にし遂げた暁は
その暁と言いさして
勇士もさすがに胸迫り
顔を背けてあちら向く

側には親子三人が
身動ぎもせず俯いて
我が子ながらも天晴れと
思わず落す一雫
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作詞 真下飛泉
作曲 三善和気

背嚢枕に草の上
ごろり横になったれど
勇ましかりし戦いが
まだちらついて眠られず

ドンと最初に一発や
逃げうろたえた敵兵や
隊長殿の号令や
よく手向うた一隊や

撃たれた友の身の上や
あれやこれやと思う内
疲れにいつしか高鼾
鼾の中に虫の声

ふと目が覚めて見上ぐれば
広い野原に月一つ
御旗を置いた銃剣が
キラリキラリと光るなり

折から柳に繋いだる
隊長殿の乗り馬も
吹く川風が寒いやら
ヒヒンヒヒンと嘶いている

思えば月日は早いもの
故国を出てから小一年
ああ父上は母上は
可愛い妹は今頃は

千里東の故郷に
どんな夢をば見るじゃやら
昨日届いた手紙では
三人ながらそれぞれに

お二人様も私も
達者で暮らして居りまする
御無事で戦争なされよと
これは妹の女文字

お前の留守は寂しいが
妹の静がいそいそと
朝早うから働いて
晩は色々二人をば

肩を打つやら擦るやら
大事にかけてくれるゆえ
村一番の誉め者と
こは母上の仮名ばかり

麦も良かった田も植えた
蚕も今年は上出来よ
こちらの事は気にせずに
お天子様へ御奉公

大事の働き抜かるなと
こは父上の御家流
また取り出して繰り返し
月の明かりで読む折に

喇叭の音がタタタタタ
敵の夜襲か小癪なと
皆立ち上がり武装して
瞬く暇に列組んで

隊長殿の号令に
故郷の夢もどこへやら
逆さに寄する勢いは
雨か嵐か大波か

空には月がキラキラと
露営の跡を照らす時
かなたに響く勝鬨は
天皇陛下万々歳
敵の要害遼陽城や
固き保塁八重にも築
二十余万の兵をば集め
蟻の通わん隙間もあらず

城も固かれ多かれ兵も
やがて落さん撃ち尽くさんと
勇み勇めるますらお武夫
三手に分かれて北へと進む

中に右翼は弓張嶺の
月に銃剣揃えて迫る
敵は弾丸射下ろすのみか
岩を落として手強く防ぐ

されどついには湯河の谷に
入りて蠢く袋の鼠
かくて両断すれども敵の
左右の翼はなお張る力

尽くせ尽くせ苛てど彼の
砲火夜を日に継ぎても絶えず
かつや篠衝く大夕立に
山は煙りて攻むるに迷う

されど怯まぬ我がつわものは
やがて紅沙の嶺をば奪い
さらに大西溝辺占めて
いよよ破竹の勢い猛し

中央左翼も相連なりて
夜も眠らず攻めつつ進む
孟家房より首山保かけて
込むる硝煙飛び散る火花

戦半ばに下りし勅語
泣いて拝する士卒の心
君の御為と疲れも忘れ
息のある間は進めと奮う

ついに堪えず退く敵を
太子河岸に追い詰め撃てば
人の波湧く遼陽城や
停車場辺り逆巻く炎

今や敵軍死に物狂い
我も勤めを果たさで置かず
己が手傷を縛りもあえず
友の屍を踏み越え進む

十日継続戦線十里
史にも見えざる大激戦の
果ては九月の四日の朝
落ちぬ遼陽遼陽落ちぬ

落ちぬ遼陽遼陽落ちぬ
呼べや万歳万歳呼べや
国を挙りて喜び歌い
祝う灯火地上の星か
作詞 佐々木信綱
作曲 上真行

押せども押せども車は行かず
進まぬ荷馬労わりて
険しき坂道深き谷
道無き道を進み行く

梅雨時の沼なす道も
日陰燃え立つ砂原も
吹雪烈しき山陰も
車を押しつ馬引きつ

靴は破れつ草鞋は切れつ
足は傷付き血は流る
雨の夕暮れ颪の朝
十里十二里十三里

暗き内より夜更くるまでも
苦しき勤め続けつつ
疲れに疲れ疲れても
安く眠らん暇も無し

等しく兵と召されし輸卒
砲の響きに血は湧けど
わき目もふらず一筋に
糧食弾薬運び行く

人に勝れる苦しみありて
華やかならぬその勤め
戦は休む時あれど
彼等は休む時あらず

御国の安危に関わる戦
御国の為の一言に
その一言に身を捧げ
あらゆる辛苦に耐え忍ぶ

輜重輸卒の隠れし勲
隠れし力人知れず
国に捧ぐる勤めには
優り劣りのあるべしや

輜重輸卒の苦しみ思え
隠れし辛苦思え人
隠れし勲思え人
涙ある人血ある人
作詞 佐々木信綱

蔚山沖の沖遠く
棚引き渡る黒煙
南を指して進み来る
かの三隻を見よや見よ

我が商船の数数多
不法の弾丸の的となし
沈めし敵の艦隊ぞ
待ちに待ちたる艦隊ぞ

金州丸よ常陸丸
撃ち沈めたるその折の
敵の無道の振る舞いは
神人共に憤る

三度濃霧に遮られ
取り逃がしたる敵の艦
我が艦隊のますらおが
恨み呑みつつ待ちし艦

豊栄昇る朝日影
光眩き海原を
轟き渡る砲の音
天地を込むる砲煙

雨より繁く撃ち出だす
我の砲火を被りて
敵艦いかで向かい得ん
敵艦いかで支え得ん

重き痛手を負いつつも
逃ぐるやロシアグロンボイ
一人後方に残されて
沈み果てたりリューリック

幾百人の敵兵は
渦巻く波に漂いて
浮きつ沈みつ呼び叫ぶ
沈みつ浮きつ呼び叫ぶ

刃向う敵に向かいては
鬼神のごとく戦えど
力無きをば憐れみて
救いぞ上ぐる敵兵を

彼が無道に報ゆるに
我人道を以てして
溺れ溺るる敵兵を
救いし数は六百余
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