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陸・海軍礼式歌
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不詳


想い起すも涙かな
頃は明治の二十八
清国既に和を結び
台湾島は我が領と
成しを無智の土民共
龍車に向かう蟷螂の
それかあらぬか健気にも
弓矢を取りて立ちにける

その討伐の大命を
陸軍中大勲位
北白川の宮殿下
近衛師団の長として
恐れ多くも九重の
竹の園生の御身にて
士卒を率い敵国の
三貂角に御上陸

頃しも炎熱焼く如く
日にも恐れず征軍を
馬にも召さず草鞋を
穿つて進む三貂嶺
降り来る雨は篠をつく
中もいとわぜ賜いらず
士卒は為に感激し
涙に征衣を濡らしける

草履いかに猛くとも
難なく台北占領し
七月新竹陥いれ
明くる八月彰化府や
嘉義台南を平定し
勇みに勇む近衛兵
それ水無月の末つかた
台南指して進みける
修羅の巷の習いとて
或いは野に伏し山に伏し
またある時は馬蹄にも
懸らぬ峻険踏み越えて
暫しと憩う時の間も
心を配る敵の国
今日も荒野に夜もすがら
鎧も解かで仮枕

嗚呼痛わしや中将の
宮は玉枝の貴も
士卒と共に艱難を
召されて遂に御不例の
身さえ養う暇なく
担架に召され全軍の
指揮をなされつ進軍す
時これ八月末つかた

鬼を挫ぐ勇あるも
進む病気に勝るべき
臣下の人々恐縮し
御帰朝進め奉る
宮には任務を重きとし
遂に聞き入れ賜いらず
台南降ると聞き召し
笑をもらして御臨終

ああ慈なの御事や
さは去りながら国の為
我が大君の御為に
尽くし賜いし功しは
忠烈偉勲今もなお
大和島根の鎮めぞと
仰がぬ民はなかりけり
仰がぬ民はなかりける
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大院君に筒先を
向けるは賊か逆臣か
主君に手向かう人非人
不倶戴天はこやつなり
素より護衛の日本兵
何の猶予のあるべきぞ
蟷螂の斧小癪なり
目に物見せてくれんずと
打ち出す銃砲揮る刀
その働きの鋭さは
妖魔の業か神術か
実にぞ神国神の業
いかに無法の徒なりとて
いかに百万来ればとて
いかで敵する事やある
いかで勝つべき道理ある
生兵法の恥さらし
ただ一戦に敗北し
九死一生潰散す
その有様の哀れさよ
その時彼の傷殺は
殆ど山の如くなり
作詞 岡部道輔



海洋島の波高く
岩に砕くる白波は
実に白龍の翻る
様に似たりの苔の露
ただ一艘の軍船を
取り巻く敵の大艦は
艨艟雷艇二十艘
打ち出す砲丸雨霰
突来る水雷凄まじく
死地に落ちたる艦命を
繋いでいかで日の本の
軍人と言わるべき
我事既に終わりたる
時は来にけりいざさらば
底の藻屑となるとても
いかでか敵に降るべき
死なば諸共敵艦と
沈みて国の誉れをば
龍の都の底までも
伝えて誉残すべし
今こそ我の死するべき
時は来にけり心して
砲弾限り腕限り
敵を苦しめ然る後
かかれや撃てや弾丸を
裂けよ潜れよ敵弾を
撃てや崩せや敵艦を
進めよ行けの号令は
奈落の底の末までも
響くばかりの勇ましさ
二十余艘のその中を
退きつ潜りつ奮戦し
受けたる弾は数知れず
敵を撃ちたるその数も
知れぬは波の引き潮に
跡を消さしてつつがなく
引き上げたるは見事なり
祝え喜べ皆祝え
謝せよ国民感謝せよ
我が海陸の皇軍は
北に南に打ち勝ちて
あわれ北京の落城は
日影も待たぬ春の雪
その日の本の光ぞと
その日の御旗を押し立てて
四百余州は何のその
四億の民よものかわな
世界を照らす大君の
御稜威の程も著く
御国の栄えも知れたり
祝え喜べ皆祝え
今威海衛討ち取りつ
勝ちすさびたるこの勝ちは
殊に武名の聞こえある
第二師団の勲功か
奥羽男子の忠勇に
謝せよ国民感謝せよ
人と生まれし思い出ぞ
時に長きにこの時に
国も多きにこの国に
生まれし甲斐のこの名誉
祝え祭れよこの君を
祝え喜べこの国を
謝せよ国民皇軍に
先に逸早や台北を
占領をして勇名を
轟かさをし近衛兵
今や進んで新竹の
険を阻んで我が軍を

防ぎ止めんと愚かにも
守備しおける賊共を
一掃なさんその為に
進の嫌悪も事とせず
百度以上の炎熱も
敢えて意とせず奮然と
新竹目掛け進ませつ
雲霞の如く集いける
数千百の敵兵を
迎えてここに逸早く
最も烈しき戦いは
互いに発す大小の
砲煙哨雨と諸共に
美事彼奴等を撃退し
直に乗っ取る新竹城
斯かる鋭き我が軍が
破竹の勢い南進に
流石愚昧の賊原等も
銃器弾薬打ち棄てつ
山また山を打ち登り
渓また渓を打ち渡り
丸びつこけつ一応に
道なき道を走りつつ
彰化県へと逃げのびて
八掛山頂有名の
音に名高き険山に
備えありつる砲台を
またなき物と頼みつつ
最も兵備を巖にして
我が南進の軍隊を
防がんものと勤めける
修理に疎き賊原が
身の程知らぬ挙動は
笑止にも又愚かなり
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